はじめに
Veeam Backup & ReplicationがSMB(Server Message Block )マルチチャネルを有効に活用できるというのは本当ですか?という質問をよく受けます。答えは「はい」です。ただし、バックアップ設計およびコンフィギュレーションがそのように設定されていれば、の話です。そう設定されてさえいれば、SMBマルチチャネルは自動的に活用されます。それがSMB(サーバーメッセージブロック)3.0の機能です。すなわち、ネットワーク設計に気を配り、バックアップトラフィックの予想外の反応に驚かされないようにしておくことが得策と思われます。もちろん、それは嬉しい驚きのはずですが、準備しておくにこしたことはありません。
そこで、SMB 3.0マルチチャネルの機能を示す簡単なテスト環境をここに紹介したいと思います。ただし、これはバックアップアーキテクチャ設計上の参照ガイドではありません。あくまで、SMBマルチチャネルがどのように有効利用されるかを示す一例です。
Veeam Backup & ReplicationによるSMBマルチチャネル活用
テスト環境を図解すると以下のようになります。
最適なネットワークパスが自動選択される過程において、着目すべき幾つかの重要な点があります。
SMB 3.0マルチチャネルは、そのロジックにしたがって、ネットワークの最適なトラフィックを実現します。下図にその概要を示します。
上の表は、さまざまなNIC(ネットワークインタフェースカード)の組み合わせにおける、SMB 3.0の機能を的確に表しています。SMB 3.0が最適なネットワークパスを選択するためのロジックは下記の通りです。
- RDMA対応NIC(rNICs)が優先され、最初に選択されます。よって、大量データの送信時には、rNICsが最大のスループット、最小のレイテンシーを実現し、CPUの負荷を軽減します。
- RSS(受信側スケーリング)対応NICでは、拡張性が向上し、サーバーの最初のコアに負荷が集中しません。RSSの適用を正しく設定すれば、二番目に優れた機能性が得られます。
- NICの通信速度が三番目の評価基準になります。例えば、10 GbpsのNICは1 GbpsのNICに比べ、はるかに優れたスループットを示します。
このロジックにしたがうと、SMBマルチチャネルは、LBFO(負荷分散・フェイルオーバー)で管理された環境よりも、RDMA対応NIC(10 Gbps)2つの組み合わせを選ぶことが明らかです。LBFOインタフェースはRDMAをサポートしておらず、サポートするRSSも最大スループットは2 Gbpsだからです。下記のスクリーンショットはまさにその状況を表しています。
結論
冒頭の質問に戻りますが、Veeam Backup & ReplicationがSMBマルチチャネルを有効利用するのか、という問いの答えは「はい」で間違いありません。しかも、SMB 3.0マルチチャネルの適用をセットしたり、Veeam Backup & Replicationでバックアップの優先ネットワークを設定する必要さえありません。もちろん必要なら、そうしてもかまいませんが、特別にそのための設計をするのではなく、最適なネットワークパスが正しく自動選択されるようにするのが理想的です。前述のデモ環境がその状況を表しています。Veeam Backup & Replication VMとHyper-Vホストおよびバックアップターゲットが10.10.0.0/16のネットワークをサブネットとする環境においても、バックアップのトラフィックは10.1.0.0/16を使用しています。10.10.0.0/16は、VMとHyper-Vホストとバックアップターゲットが標準機能で属するActive Directoryドメインで使用されます。しかし、SMB 3.0は2つのRDMA対応NIC(10 Gbps)を通じて10.1.0.0/16サブネットからバックアップのソースとターゲットの双方にアクセス可能なので、その選択基準にもとづいて自動的に10.1.0.0/16を使用します。特に手動で介入する必要はありません。
SMBダイレクトのサポート
Veeam Backup & Replicationが適切なコンフィギュレーションによってSMBマルチチャネルを有効に活用できることが判りましたが、そこで新たな疑問が生じます。Veeam Backup & ReplicationはSMBダイレクトを活用できるのでしょうか? この答えもイエスです。SMBダイレクトがすべてのホストに正しく設定され、ネットワークパスを適切に切り替えられるのなら、Veeam Backup & ReplicationはSMBダイレクトを活用します。マルチチャネルがSMBダイレクトを検知するので、マルチチャネルが正しく機能し、SMBダイレクトが利用可能である限り、マルチチャネルによって活用されます。だからこそ、SMBダイレクトあるいはRDMAがNICに対し有効となっているとき、ネットワーク全体を通じての適正なコンフィギュレーションがより重要になります。SMBダイレクトのコンフィギュレーションに問題があれば、ネットワークに何らかの悪影響を及ぼすことでしょう。
考えても見てください。高いスループット、低いレイテンシー、CPUオフロード、Hyper-Vホスト、SOFSノード、S2Dノード、バックアップターゲットへのCPUの影響を最低限に抑える、など。利点は枚挙に暇がありません。まして、SMBダイレクトはこれらの環境にどうせ実装することになるものです。バックアップ設計や最適化を計画する上で、その利用を検討しない手はありません。
SMB 3.0とWindows Server 2016のさらなる効果
SMB 3.0ファイルはWindows 2012(R2)あるいはWindows Server 2016クラスタ(CSVディスク上に存在する必要はありません)でアクセスできるように継続的にシェアするのが得策です。SMB 3.0を用いた透過的なフェイルオーバーが可能になり、利用度がさらに高まります。バックアップが、わずかな休止を除き、ずっと稼動し続け、たとえファイルサーバーのフェイルオーバー後にバックアップターゲットのノードがクラッシュあるいはリブート中であっても、中断することはありません。その機能を、Windows Server 2016のReFSv3とVeeam Backup & Replication v9.5のサポートと組み合わせれば、バックアップ設計における多くの局面で最適化の可能性が拡がり、高度なソリューションが実現できるはずです。
検討事項
1つ疑問に思ったのは、Veeam Backup & Replicationにバックアップの優先ネットワークを設定したらどうなるのだろうか、という点です。SMBマルチチャネルの運用に何か影響はあるのでしょうか。つまり、Veeamに優先的なネットワークを設定することで、SMBマルチチャネルが複数のNICを使用できなくなるということはないのでしょうか。
おそらく、実際に複数のNICが活用されるのではないかと予想します。同じ機能のNICが異なるサブネットに置かれた場合、1つだけが使用されるはずです。そもそもVeeamは、サブネットごとに優先的パスを設定します(複数パスは複数サブネットで)。複数NICが同一のサブネットにあるか異なるサブネットにあるかにかかわらず、SMBマルチチャネルが適用されていれば、たとえVeeamに優先パスが設定されていても、同一サブネットにある同一機能のNICはすべて活用されるはずです。注意すべきは、SMBセッションのセットアップにはNICごとに1件のIPが使われるということ、そして機能が有効であれば、複数パス、SMBダイレクト、RSS、通信速度、単一あるいは複数サブネットなどの状況におうじて、個々のNICが適宜使用されるはずだということです。
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