コロナ禍で加速する政府のデジタルトランスフォーメーションは正しい方向に進んでいるのか?


昨年来、政府がデジタルトランスフォーメーションに本腰を入れて取り組んでいる様子が、いろいろなニュースから伺えます。急に力を入れ始めたのか、前々から着実に積み重ねてきたのか、憶測でものをいうのは控えますが、メディアの取り上げ方は常々政府に批判的、というかお目付け役的な傾向があるので、コロナ禍でデジタル化の必要に迫られ、慌てて進めている印象を受けます。

たとえば、新型コロナウイルス接触確認アプリCOCOAの不具合がたびたび取り沙汰されたり、ワクチン接種円滑化システムV-SYSの設計に不備があるような指摘も見受けます。特にV-SYSは、報道によれば、ワクチンの分配管理を重視し過ぎて、いつ誰に接種したかは管理できない問題があるのだとか。

一方で、そのシステム開発チームはかなり優秀なメンバーで構成され、クラウドネイティブのアプローチにもとづいた最先端の開発に取り組んでいるというSNSの情報もあります。「クラウドネイティブ」と聞いて俄然興味が湧き、ネットでいろいろ調べてみたのですが、そのような具体的な情報は出てきませんでした。全国の地方自治体と連携してワクチン接種の情報をデータセンターで中央管理するようなので、たしかにクラウドを中心に設計されたシステムには違いなさそうです。もしかしたら、「クラウドをフル活用すること」を誰かが「クラウドネイティブ」と形容し、その噂が独り歩きしている可能性も否定できません。でも、「優秀なメンバー」に嘘はないようなので、そんな精鋭チームが昨年から今年にかけて新しいシステムの開発に一から取り組んだら、「クラウドネイティブ」を本格的に採用する可能性も十分にあり得ます。

もし、それが本当なら、前述の設計の不備の問題も、報道するメディア側の誤解にすぎない可能性だってあります。はたから見れば、新システムに特定データ(たとえば、ワクチン接種者の個人情報)を処理する機能が欠けていたら、これはとんでもない大失態だ!と思って当然ですが、各機能がマイクロサービスで分離されて個々に開発され、それぞれが柔軟に組み合わせられるようになっていたら、後から要件が追加されるのは織り込み済みだったはずです。重大視する部外者をよそに、開発チームはまったく動揺していないのかもしれません。むしろ、中心的な機能から優先順位を付けて開発を進め、CI/CD(継続的インテグレーション/継続デリバリー)の一環として、あとから少しずつ拡張していく予定ですらあったのかもしれません。そのようなプロセスがすでに自動化されているのなら、前述の設計不備は、実は不備ではなくてDevOpsの実践の結果、新たなニーズを運用サイドから汲み取っているだけだと言えなくもありません。

本当のところはわかりません。足りない機能を補うために別システムを新たに作るという報道もあるので、V-SYSにはクラウドネイティブの拡張性はないのかもしれません。あるいは、クラウドネイティブを理解しない政府と開発現場との間に温度差があるのかもしれません。

いずれにしても、この状況は「クラウドのフル活用」と「クラウドネイティブ」の違いを表す例としてわかりやすいので、クラウドネイティブ前提で仮説を書いてみました。本当にクラウドネイティブであったら良いなと願います。

それ以上に願うのは、セキュリティへの考慮が徹底されていることです。日本政府が慌ててデジタル化して、不慣れなクラウド技術を駆使していると —— それが事実か否かは別にして、そういう情報が流れると ―— 海外のハッカーの恰好の標的にされかねません。したがって、強固なセキュリティは、言ってみれば一番重要なステークホルダーである国民全員の切なる願いです。すべての要件の中で断トツの優先順位が付けられて然るべきです。

セキュリティ対策は開発後に施行するのでなく、最初から設計に組み込むことが、クラウドネイティブでは特に重要です。そのことは、弊社が取り扱うコンテナ環境のデータ管理ツールKasten K10の紹介記事でもいろいろな角度から取り上げてきました。Kastenのツールを使用していなくても原理は同じなので、これらの記事やKubernete関連の記事が、これからクラウドネイティブのアプローチを取り入れる開発チームの方々にも参考になれば幸いです。

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