ビジネス インテリジェンス(BI)ツールによるデータの可視化が、ビジネスの意思決定にとても有益なのは衆目の一致するところですが、BIツールを導入した企業がすべてそれを有効利用できているかどうかは意見が分かれるようです。
米国の市場調査会社Ascend2のレポートによれば、データをダッシュボードで可視化している企業のうち、BIの活用が「非常に成功している」と回答したのは43%にとどまり、大半は「やや成功している」と答え、失敗か成功かと問われれば成功といえる程度の消極的な肯定派です。BI戦略へのせっかくの投資に、多くの企業がこぞって大満足している状況ではない様子です。
米国発の調査レポートなので、日本の動向には直接当てはまりませんが、BI活用では米国が先を行っているので、日本企業にも十分参考になる調査結果ではないでしょうか。
米企業が大満足していない理由は、BIツール導入の主目的と重要課題の調査結果がわかりやすいです。下表のとおり、最大の目的はImproving marketing decision-making(マーケティング上の意思決定を改善する)であり、それを重要課題として挙げている企業が比較的少ない点から、ダッシュボードによるデータの可視化がビジネスの意思決定において多かれ少なかれ役に立っていることが判ります。
一方、最大の課題はAttributing revenue to marketing efforts(マーケティングの努力を収益につなげる)であり、それを主目的に挙げる企業も相当多いのに、結果が十分に伴っていない様子が伺えます。
このギャップを生む理由は、「必要なデータへの一貫したアクセスが得られない」と考えるユーザーが少なくないことと関連性があるようです。ダッシュボードの理想は、ユーザーが必要としているデータだけをわかりやすく提示することであり、そのニーズの的を外すとデータ不足に陥り、逆にニーズを広く網羅しようとするとデータ過多になります。実際に、「ビジネスの意思決定に的確なデータを常時または多くの場合に得られている」としたユーザーは半数を切り、減少傾向になっているという調査結果もあります。
下表は、ダッシュボードの設計者にユーザーが求めることを示しています。上から順に、1)適正な指標 2)データの目的 3) 可視化されるデータの種類 4) データの優先順位 5) 誰がデータを見るのか 6) データの説得力 7) 色使い、を表しており、ダッシュボードの見た目もより、データの的確さが求められていることがわかります。
つまり、BIツールをビジネスに最大限に活用するには、ダッシュボードのデザイン性よりも、的確なデータを適正な指標で提示することが何より重要であり、ユーザーのニーズ分析が欠かせないことがわかります。
これは、BIに限らず、ビッグデータを活用するAI全般に言えることですが、使う側が自分の目的を明確に設定して賢く使わないと、このようなツールは「便利過ぎて逆に不便になる」傾向があります。データ アナリティクスも賢く使うためにはデータ サイエンティストによる介入が不可欠で、そこでユーザーのニーズに合わせたチューニングが行われます。そのチューニングによってデータ アナリティクスの有用性が決まると言っても過言でなく、AIの便利さは結局それを操る「人間」次第ということになります。
企業のBIツールも例外ではありません。まず利用する側の企業が目的を明確にし、それに応じた使い方をすれば、BIツールの満足度がさらに上昇するのではないかと期待します。
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