データ資産をビジネスの原動力に変えるには


データドリブンの重要性

最近は「ビッグデータ」という言葉を以前ほどは聞かなくなりました。データを集めて活用することがビジネスはもちろん、日常生活にもすっかり定着したので、データの量が多いのは当たり前であって、わざわざ言う機会が減ったのかもしれません。大量データをうまく整理して活用しなければならないのが常識となった今、ビッグデータに代わって「データドリブン」という言葉をよく聞くようになりました。ビジネスはデータドリブンでなければならないし、企業はデータドリブン組織を目指しているし、人々の日常だって今やデータドリブンです。

ドライブ・ドロウブ・ドリブン ― 英単語の時制をカタカナ語にして使うのは何となく違和感を覚えるのですが、「ドリブン」は何とかならなかったのでしょうか。「データに基づいた意思決定」と言いたいときにData-based decision makingではデータベースになってしまうし、データに基づくだけでなく、データを原動力とする意味合いもこめてのData-drivenだから、原語の意味を生かすには日本語も「ドリブン」とするしかなかったのでしょう。

ビジネスの意思決定をデータに基づいて行えるようになったのは、ダッシュボードの普及に依るところが大きいです。企業に蓄積された膨大なデータにビジネス上の価値が見い出され始めた頃、BIツールが登場して経営陣に的確なデータがプレゼンされるようになり、もともと重要だった「データに基づく意思決定」がより手軽に実現可能になりました。できるとわかったら、もっと極めよう!となるのは自然な流れで、データドリブンの重要性は、ここ数年さらに強調されるようになりました。

データの民主化とデータリテラシー

しかし、膨大なデータはデータオーシャン(データの海)です。どこに価値が潜んでいるのか、広すぎて皆目見当がつきません。関連データだけを仕分けしてデータレイクにまとめても、データの専門家でないと使い方がわかりません。つまり、企業がデータドリブンになるためには、社内の誰もが必要なデータにアクセスできるようにする「データの民主化」が必要です。

民主化は、データをきちんと構造化し、体系立ててまとめることで達成できますが、アクセスできることと、適切に使えることは同じではありません。データが玉石混交である場合、データの真価を見抜く力が必要で、データの民主化が進めば進むほど、各自のデータに対する判断力がまちまちになって、企業のデータドリブン体制が削がれることになります。このデータに対する判断力を「データリテラシー」と言います。

つまり、企業が真にデータドリブンになるためには、データの民主化と同時に、社員一人ひとりのデータリテラシーも重要になります。まして、BIツールは年々進化して、誰もが手軽に洗練されたダッシュボードを作成できるようになってきたので、データリテラシーの重要性はますます高まっています。データの民主化だけが進んで、データリテラシーが伴っていない組織でデザインだけ洗練されたダッシュボードが量産されてしまったら、意思決定が間違った方向に行きやすくなってしまいます。

余談ですが、これは近年のネット社会全般に言えることです。誰もがSNSを効果的に活用できるアクセス性だけが進化し、リテラシーが伴っていないと、洗練された動画の説得力だけが先行して、個人個人の意思決定が変な方向に誘導されやすくなります。この観点では、企業文化も社会の縮図であり、社員一人ひとりのデータリテラシーはビジネスを成功させるための付加価値ではなく、必須課題と言えます。

 

Data as a Productのアプローチ

社内でデータの民主化とデータリテラシーを同時に促進する方法として、最近注目されているのがData as a Productという考え方です。文字どおり、データをプロダクトとして捉え、社内でデータを処理、分析するときに対象ユーザーを念頭に置いて、品質、利便性、満足度を重視し、プロダクト管理の原則をデータのライフサイクルに適用するアプローチです。

社内でデータがわかりやすく、使いやすくなれば、BIツールの利便性向上と相まって、社内の各部署のさまざまなプロジェクトで優れた的確なダッシュボードがデータ コミュニケーションを促進してくれます。これにより、社内のデータリテラシーがさらに高まるという好循環が生まれます。このような企業文化をデータカルチャーと言います。

データカルチャーの醸成

要するに、企業が膨大なデータ資産を有効活用するには、社員一人ひとりが適切なデータに適切な方法でアクセスできて、その真価を理解でき、BIツールなどで適切に視覚化できることが重要です。それが互いのデータ理解をさらに深める好循環を生み、データカルチャーが醸成されて、企業はおのずとデータドリブンになります。

逆に言えば、データドリブンを目指す企業は、データを集めてデータに基づく意思決定を行うことばかりに注力しても、100%の効果は得られません。社内にデータカルチャーを育む必要があります。

 

 

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