ナースコールのデータ分析結果をわかりやすく視覚化
はじめに
医療現場ほど、効率性と即応性が求められる環境はありません。たとえば、病院では、ナースコールへの迅速かつ的確な対応が患者ニーズを満たすために(時として、命を救うために)非常に重要であり、優れたナースコール システムの構築はすべての病院における喫緊の課題です。これは病院の看護師に限らず、介護施設の介護士も含め、あらゆる医療機関におけるレスポンスシステムに共通しています。このようなシステムは、医療従事者と患者とをつなぐ命綱の役割を果たし、ヘルスケアの根幹を支えるシステムと言えます。医療施設のデジタル化が進んだ米国では、Cornell 4000/7000 ナースコール システム、ワイヤレス ナースコール システム、TekTone NC120/NC300 ナースコール システム、Aidbellナースコール システム、Intercallナースコール システムなど、数々のナースコール システムが医療現場に不可欠な存在となっています。
本稿では、ナースコール システムをダッシュボードで視覚化して、看護師業務を効率化する取り組みを例に取り上げ、医療機関におけるデータの有効利用と業務のデジタル化の重要性について検証していきます。
そもそもナースコール システムとは?
ナースコール システムとは、病院、介護施設、その他の医療施設で使用される統合コミュニケーション システムで、主に患者が緊急時などに看護師や介護士を呼び出すために使用します。ナースコール システムは以下の要素で構成されます。
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ナースコール システムの一般的な機能
ナースコール システムは通常、患者のケアと病院運営の効率性を高めるための総合的な安全・セキュリティ管理ソリューションを提供します。ナースコール システムでは、以下の機能性が特に重視されます。
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ナースコール システムを利用するメリット
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ナースコール システムは現代のヘルスケアにおいて重要な役割を担い、患者の安全と安心を確保するだけでなく、医療従事者の職務を効率化する効果をもたらします。上記に挙げた機能は、テクノロジーの発達とともに、日進月歩で高度化しており、高齢化や人手不足が進む社会において、医療現場により深く取り入れることが急務になっていると言っても過言ではありません。
ナースコールのデータ分析
ナースコール システムでは、発生したすべてのイベントを記録し、データベースに保存することができます。ここで言うイベントとは、「コールボタンの発信」、「看護師の訪問」、「患者の退院」、「サービス リマインダー」などを指します。このような、データベースに蓄積された大量の情報を、業務改善に生かさない手はありません。サードパーティのデータ分析ツールを活用して、ダッシュボードを生成すれば、ナースコールへの対応を最適化するために役立つ情報がさまざまな形で明確になります。ナースコール システムのデータ分析ダッシュボードは、医療施設において以下の重要な役割を担います。
患者対応の強化
- レスポンスタイムの改善 ― データ分析ダッシュボードによってレスポンスタイムに関するインサイトをリアルタイムで得ることができ、なんらかの遅延が生じている場合は、問題をすばやく特定して解決することができます。スタッフの配置やシフト、ワークフローのパターンを分析することにより、ナースコールへの応答を迅速化し、患者の健康管理、病院の業務体制を改善するのに役立ちます。
- 傾向の分析 ― ダッシュボードでは長期間にわたるデータを分析できるので、ナースコールの傾向を知ることができます。たとえば、ピークの時間帯を特定して、リソースの割り当て(つまり、看護師の配置や医療機器、医薬品の準備)を調整することができます。それにより、より多忙な時間帯にも確実な患者対応を継続できます。
業務の効率化
- リソースの割り当て ― 医療施設の管理者は、詳細な分析結果をもとに、スタッフ管理の意思決定を的確な情報にもとづいて行え、ワークロードの偏りを未然に防ぐことができます。医療従事者が過重労働で燃え尽きてしまうようなことがなくなり、現場環境の健全化が保たれます。
- パフォーマンス モニタリング ― ダッシュボードでは、スタッフのパフォーマンスを継続的にモニタリングできます。レスポンスタイム、コール所要時間、コール頻度などの指標をもとに、改善が必要なエリアをすばやく特定して、ヘルスケアの標準を引き上げることができます。
コミュニケーションと連携の強化
- コミュニケーションの効率化 ― データ分析ダッシュボードによって部門間の円滑なコミュニケーションを促進できます。ナースコールのモニタリング プラットフォームを一元化することで、医療施設全体で情報を効率的に共有でき、連絡の行き違いや誤解を防いで、万全な患者ケアを確保できます。
- 連携の強化 ― ダッシュボードは病院内の他のシステムとも統合できるので、患者ケア体制を包括的に視覚化して、医療スタッフ全体で整合性のある効率的なヘルスケアを確立できます。
データ主導型の意思決定
- エビデンスにもとづいた業務改善 ― ナースコール システムで蓄積したデータをもとに、エビデンスに裏付けされたヘルスケアの改善策を推進できます。医療施設内の業務全般を俯瞰して、改善の必要なエリアを識別し、確実なデータにもとづく業務改善を必要なときに必要な場所に施行できます。
- 戦略的プランニング ― 継続的なデータ分析が長期的な視野に立ったプランニングと政策決定を可能にします。将来的な課題に備えるための研修システムやプロセス改善策をプロアクティブに取り入れて、地域医療にも貢献できます。
EspressDashboardによるナースコールデータ分析
ナースコール システムに統合してダッシュボードを生成するツールとして、ここでは、Quadbase SystemsのEspressDashboardを取り上げます。EspressDashboardを使用すると、ナースコール システムで収集されたデータから派生した主要な指標を、インタラクティブなダッシュボードでわかりやすく表示することができます。最初に概要データが表示され、そこから詳しい情報へと掘り下げることができるので、ユーザーは必要に応じて詳細レポートを確認することができます。たとえば、日付の範囲、病室、フロアなどのパラメータで絞り込んだ詳細データを表示できます。
ダッシュボードで使用される指標はアラートの生成条件として設定することも可能で、値が一定の範囲に収まらなかった場合にダッシュボードに通知を表示したり、Eメールやテキストで通知を受け取ることができます。
以下にKPI(重要業績評価指標)として使用できる主要パラメータをいくつか紹介します。
- Call Response Time(コール レスポンスタイム) ― コールボタンが押されてから音声がつながるまでの経過時間。
- Service Remind Time(サービス リマインド タイム) ― サービス リマインダーが通知されてから実際に誰かが対応し、病室で通知をオフにするまでの経過時間。
- Number of calls during active service remind(サービス リマインダー コール回数 ― リマインダーの開始から終了までの間に(同じ病室/ベッドから)発信されたコール回数。
- Button to Bed Time(ボタン ツー ベッドタイム) ― コールボタンが押されてから誰かが部屋に訪れるまでの経過時間。病院の調査では、患者は一般的にこれを「コールレスポンスタイム」として認識しています。
- Missed Rounding(巡回不足回数) ― 看護師/介護士の訪問が60分以上ない場合に1回の巡回不足がカウントされます。
EspressDashboard活用例
- 特定の時間内(一定の時間帯や一週間内の一定日数)における1回の看護タスクのパフォーマンスを分析できます。KPIには、ボタン ツー ベッドタイム、コール ボリューム、サービス リマインダー コール回数などを使用します。
- 特定の時間内(一定の時間帯や一週間内の一定日数)における1回の看護タスクのパフォーマンスを分析できます。KPIには、ボタン ツー ベッドタイム、コール ボリューム、サービス リマインダー コール回数などを使用します。
- 異なる2つの特定時間内(一定の時間帯や一週間内の一定日数)における1回の看護タスクのパフォーマンスを比較できます。KPIには、ボタン ツー ベッドタイム、コール ボリューム、コール レスポンス タイム、巡回不足回数などを使用します。
- 特定の時間内(一定の時間帯や一週間内の一定日数)における複数回の看護タスクのパフォーマンスを個々に、または病院全体の平均と比較できます。KPIには、ボタン ツー ベッドタイム、コール ボリューム、コール レスポンス タイムなどを使用します。
- 特定病棟の各看護師のパフォーマンスをリアルタイムで表示できます。KPIには、ボタン ツー ベッドタイム、病室滞在時間、コール回数などを使用します。
- 特定病棟の病室別または患者別のレスポンスタイム統計をリアルタイムで表示できます。KPIには、ボタン ツー ベッドタイム、コール ボリューム、コール レスポンス タイム、病室滞在時間などを使用します。
- 特定期間内に患者や病室に関して起きた事象の関連情報を簡単に見つけ出せるクレーム解決ダッシュボードを作成できます。KPIには、巡回不足回数、全イベントのレスポンスタイムを使用します。
- 全看護師の現在のシフトのパフォーマンスをリアルタイムで表示できます。病院のフロアプランをもとに特定の階や部門のパフォーマンスを掘り下げることもできます。KPIには、ボタン ツー ベッドタイム、コール レスポンス タイム、サービス リマインド タイムなどを使用します。
- 特定期間内の全イベントおよびサービス リマインダーのパフォーマンス傾向を表示できます。イベントタイプごとに詳細を掘り下げることもできます。KPIには、イベント レスポンス タイム、サービス リマインド タイム、イベント経過時間などを使用します。
- 病院のフロア/病棟別の看護師パフォーマンスを表示できます。KPIには、コール レスポンス タイム、イベント レスポンス タイム、サービス リマインド タイム、イベント経過時間などを使用します。
- 特定期間内におけるフロアごとの患者対応状況を表示できます。KPIには、巡回不足回数、日別/看護師別の平均訪問回数、平均サービス リマインド タイムなどを使用します。
- 病院の総合的なパフォーマンスをすばやく確認できる概要ダッシュボードを作成できます。KPIには、総コール数、ボタン ツー ベッドタイムの当日平均などを使用します。
医療機関におけるダッシュボードの将来性
ダッシュボードを導入すれば、将来的には、AIを活用した高度な機能で各種KPIに予測分析も組み込むことができ、業務全般にさらなる効率化が見込めます。医療機関はデータの宝庫であり、AIをもっとも有効に活用できる分野であると同時に、現在もっとも活用が進んでいない(宝の持ち腐れになっている)分野とも言えます。本格的なAI活用を早急に取り入れるには敷居が高いと感じている病院や医療施設でも、まずはダッシュボードによるデータ分析を充実させ、徐々に高度化していくのが、より現実的で実践的な戦略と考えられます。
まとめ
ナースコール システムのデータ分析ダッシュボードは医療機関の業務改革になくてはならないツールです。リアルタイムのインサイトでリソースの割り当て(看護師/介護士の配置や、医療器具、医薬品の準備など)を改善でき、医療施設内のコミュニケーションを円滑にし、データ主導型の意思決定を促進できます。人材不足やスタッフの過重労働が多くの医療機関で課題となっている今日、ナースコール システムなどを通じたDXで効率化を促進し、課題を解消していかなければなりません。ダッシュボードで課題を可視化することは業務の効率化に向けた第一歩であり、大きな一歩でもあります。
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