Veeamでは仮想マシンをバックアップファイルから高速に起動するための仕組みとして、インスタントVMリカバリ機能を提供しています。この機能により、バックアップファイルの展開やデータストアへの転送を行わなくとも仮想マシンが起動できるため、仮想マシンのサイズに関わらず、例え数十TBあるような仮想マシンであっても、数分で起動することができます。
今回のこのインスタントVMリカバリ機能の仕組みを紹介させていただきます。まず、インスタントVMリカバリ機能の核となる機能はVeeamがパテントを取得しているvPower機能です。
このvPower機能はバックアップファイル内の特定の世代、特定の仮想マシンの各構成ファイルをバックアップを展開等することなく透過的にみることができるようにする機能です。
このvPowerを使用することインスタントVMリカバリでは以下のようにバックアップから直接仮想マシンの起動を可能にしています。
- ① ユーザが指定したバックアップ内の世代、VMをvPowerが透過的にVMの構成ファイルとして公開
② 公開したファイルをNFSデータストアとしてvSphereにマウント、インベントリに登録し仮想マシンを起動
③ バックアップイメージへの変更を避けるために起動した仮想マシンへの変更はvPowerを実行しているサーバがREDOログ(キャッシュ)として保存
またリストアしたVMのI/Oパフォーマンスを向上するために、データストアを指定し仮想マシンへの変更をリダイレクトさせることもできます。この場合には指定したデータストアに作成したインスタントVMリカバリ用のフォルダにREDOログの代わりのスナップショットを仮想マシンの変更ブロックを保持しているメタデータと一緒に作成、配置します。
さらにインスタントVMリカバリで起動した仮想マシンは以下の方法で運用ストレージに移行が可能です。
- Storage vMotionを使用し、以降が可能です。これによインスタントVMリカバリでマウントされたNFSデータストア上の仮想マシンをパワーオンのまま変更部分を統合し、運用ストレージに移行可能です。
※ESX(i) 4.x以前ではスナップショットを持つ仮想マシンのStorage vMotionが行えないため、データストアにリダイレクトしている場合にはこの方法での移行は行えません。
※Storage vMotionのライセンスが必要です。
- Veeam Bakup & Replicationのレプリケーション機能もしくはVM Copy機能を使用し、インスタントVMリカバリ中の仮想マシンの複製を作成できます。これによりダウンタイムは発生しますが、一度レプリケーションを実施した後に、インスタントVMをパワーオフし、最新の状態の変更ブロックを再度レプリケーション、その後フェイルオーバーを実施することでダウンタイムを最小にし、複製VMへフェイルオーバーできます。
- Veeamの移行機能であるクィックマイグレーションを使用しての移行が可能です。Storage vMotion機能がなくとも移行が可能であるためvCenter Serverがない環境でも利用できます。この場合には、まずバックアップファイルから仮想マシンを復元し、その後変更されたブロックを転送、それらを統合します。
このようにインスタントVMリカバリではバックアップから仮想マシンを高速に起動できますので、レプリケーションで作成した複製VMをフェイルオーバーするような構成と同程度のRTOを得ることができます。ただ、インスタントVMリカバリの場合には、
バックアップファイル内のデータを参照しているために、I/Oスループットが限られてしまいます。そのため、運用の仮想マシンとして利用するためには移行する必要があります。
また、インスタントVMリカバリで仮想マシンを起動し、各種検証や災害対策のテストなどに利用することも可能です。このように利用の仕方次第で様々な用途に活用できる機能になっています。
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