前回はバックアップからインスタントVMリカバリで起動させた仮想マシンの読み取りに関して高速化する方法をご紹介しました。今回は書き込み部分の高速化をVeeamのインスタントVMリカバリ時の設定で行う方法をご紹介します。
デフォルトの設定ですと、インスタントVMリカバリで起動したVMの更新データはキャッシュとしてvPower NFSを実行しているサーバ上に保存されます。
そのため、インスタントVMリカバリしたVMをパワーオンするとメモリファイル等に加え、更新データはキャッシュファイルとして保持されます。
したがって、書き込み性能はこの一時ファイルの配置先に依存しているため、この配置先を高速なものに設定変更することでインスタントVMリカバリ中のVMの書き込み性能を改善することもできます。しかし、一時的なインスタントVMリカバリのために、わざわざ高速なストレージを用意するというのは手間もコストもかかります。
これに対応するため、VeeamのインスタントVMリカバリでは更新データの書き込み先を既存のデータストアへリダイレクトさせることが可能です。これによりインスタントVMリカバリ時にSSD等の高速なデータストアを指定することで、書き込みはそのデータストアに行われます。(例えば運用環境のデータストアをリダイレクト先に指定していればVMのディスクへの書き込み性能は運用環境とほぼ同等になります。)
試しにデフォルト設定のままと、SSDのデータストアを指定した場合でiometerにより書き込み待ち時間を比較してみました。下のグラフのようにリダイレクト無しの場合には書き込み待ち時間が大きくなってしまっていますが、SSDにリダイレクトされることで高速に書き込みを行えていることが分かります。
この仕組みはいたって単純です。インスタントVMリカバリされたVMがパワーオンされる前にスナップショットを作成し、このスナップショットのデルタファイルの配置先を指定したデータストアとすることでリダイレクトを実現しています。
スナップショットにより更新データはこのデルタファイルに保存され、vPower NFSの一時ファイル保存場所は静止した状態となります。
このように、インスタントVMリカバリで復旧したVMであっても、このリダイレクト設定やInfinioのような高速化ツールを使用することでI/Oパフォーマンスに妥協せずに利用することも可能になります。
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