10月16、17、18日にVeeamのR&D部隊のいるチェコ、プラハにてVeeam Vanguard(開発元が認定する外部技術員)向けの情報展開があり、クライムも参加してきました。ここで展開される情報には、開発元の発信待ちのマル秘情報もあるため、現在全てを本ブログでレポートさせていただくことはできませんが、可能なかぎり展開させていただきます。
※量があるため、複数回に分けてお届けいたします。今回はAWS関連機能に関してです。
目次
Veeam Backup & Replication 9.5 u4実装予定の新機能
既にある程度発表されていますが、次期バージョンである9.5 u4での各種新機能の詳しい解説がありました。
キャパシティ(アーカイブ)層:オブジェクトストレージ対応(Amazon S3、S3互換、Azure Blob)
もっとも要望の多い、オブジェクトストレージへの対応についてです。9.5 u4での対応としてはAmazon S3とS3互換のみとなっていましたがAzure Blobも間に合い9.5 u4に含まれるとのことです。※アーカイブ層などとも呼ばれていましたが、正式な名称としてはキャパシティ層(Capacity Tier)となるようです。
このオブジェクトストレージ対応としてはSOBR(Scale Out Backup Repository)機能に含まれる予定であり、SOBRに保存されたバックアップを指定した日数や指定した空き容量で、キャパシティ層に自動的に移動させることができます。
移動されるバックアップデータに関してですが、バックアップファイルは複数の方式で保持することができるため、これにより異なります。増分バックアップ(合成フルバックアップ オプション有効)では最新のバックアップチェイン以外の.vbkと.vibのリストアポイントを移動しても良いリストアポイントとして扱い、設定した日数または容量のしきい値を超えている場合、キャパシティ層に移動します(永久増分バックアップの場合、最新のバックアップチェインのみであるためキャパシティ層を利用できません)。逆増分バックアップの場合、フルバックアップ.vbkと最新2つの.vrb以外を移動の対象に、増分+変換オプションで合成時に古いリストアポイントを.vrbに変換する場合、.vrbのみを移動の対象にします。
バックアップ・コピージョブの場合、永久増分形式で最新のバックアップチェインを保持しますので、それ以外のGFS設定で長期保存の設定をしたフルバックアップ.vbkのみをアーカイブします。
この時のキャパシティ層に移動したデータの保持の仕方ですが、既存のバックアップとは異なる形式でバックアップ保持します。通常のバックアップでは下記のようにバックアップファイルを作成し、このファイルに対して更新を行うことで、データブロックを格納し保持しています。
しかし、このようなファイルへの更新を伴う、保持の仕方はオブジェクトストレージには向きません。そのため、ファイルの出し入れのみで処理を行えるようにデータブロック単位でファイル(オブジェクト)を保存し、更新は行わず、各リストアポイントはどのデータブロックが必要となるのかまとめた、メタデータとして保持します。これにより、メタデータ上で使用されていない不要なデータブロックを削除し、リストア時には必要なデータブロックのみをファイルとして取り出して処理を行えます。
例えば、SOBRに保存しているバックアップジョブで、土曜日に合成フルバックアップを作成した状態で、キャパシティ層の設定で4日より古いリストアポイントを移動するように設定しているとします。この場合、下記のようにバックアップファイルからデータブロックが吸い出され、ファイルとしてオブジェクトストレージに格納されます。ローカルにはどこにデータブロックが保存されているかというメタデータのみが残ります。
そして、キャパシティ層に移動したデータブロックを必要とするリストアポイントからリストアする場合には、下記のように、まずインデックスを作成し、ローカルには存在しないデータブロックのみをキャパシティ層から取得し、リストア処理を行います。
このように、効率的な処理を実現しつつ、リポジトリの容量が無限である可能用に利用できるようになる予定です。
また、この他の新機能などにも関わってくる部分ですが、Veeamでの帯域制限時にインターネットに対する通信を、制限できるようデフォルトでインターネットへの帯域制限設定も追加される予定です。
AWSへのダイレクトリストア
現在、Veeam BackupではAzureにVMのバックアップや物理マシンのバックアップをリストア可能です。これと同様の機能がAWSでも実装予定です。AWS APIを用いたインポート、またはEBSボリュームへのデータ書き込み用のLinuxアプラインスを用いた方法の2通りでリストアできます。基本的にリストア速度などの観点から、Linuxアプラインスを用いたリストア方法が推奨されます。
また、Azureの場合と異なる点としてはAmazon EC2ではUEFIをサポートしていないため、UEFI to BIOSの変換をVeeam側で行う機能も実装される予定です。リストア対象のマシンのシステムディスクを事前にマウントし、BIOSに修正した内容でEC2にリストアすることが可能になります。
外部リポジトリ(Veeam Availability for AWS(N2WS CPM)統合)
Veeamは2月にAmazon Web Service環境のデータ保護構成・管理を実現するソフトウェアCloud Protection Managerの開発元であるN2WSを買収しました。現在、N2WS自体はそのまま継続して開発、販売を続けており、単体でも利用でき、弊社でも取り扱っています(https://www.climb.co.jp/soft/n2ws/)。
このN2WS CPMではAWSネイティブのスナップショット機能を使用し、EC2インスタンスのバックアップをS3に保管することができます。ただ、AWSの外部に保管する機能はCPM自体では持ち合わせていません。このための機能が外部リポジトリです。
ユーザが定義したAWS S3上のフォルダにN2WS CPMでバックアップを作成、そのS3フォルダをオンプレのバックアップサーバに登録することで、Veeamがその中になるバックアップを認識できるようになります。
そして、Veeamのコンソールでバックアップを別のリポジトリにバックアップコピー(2次バックアップ)することやファイルレベルのリストア、AWSやAzureへのダイレクトリストアを実施できるようになる予定です。
AWS関連の実装予定機能は以上になります。次回は同様にVeeam Backup & Replication 9.5 u4の新機能からリストア機能(セキュアリストア:ウィルススキャン機能やステージリストア:GDPR対応機能)に関してをご紹介させていただく予定です。
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