Veeam Backup & Replicationのレプリケーション機能を使用することで、vSphere/Hyper-V上の仮想マシンを別ホストに複製することができます。別ホストに複製された仮想マシン(以下、レプリカVM)は、フェイルオーバを実施することで、すぐに起動することができます。これにより、万が一運用サイトで障害が発生した場合でも、レプリカVMを起動し、短いRTOでの復旧が可能です。
その後、運用サイトが復旧した際は、フェイルバックによる切り戻し作業も実施できます。フェイルオーバ後にレプリカVMに加えた変更データも含め、元のVMへと切り戻しすることはもちろん、別VMとしての復旧を行うことも可能です。逆にフェイルオーバを完全にコミットさせ、レプリカVMをそのまま本番運用させるといったこともできます。これにより移行用途としても活用できます。
今回の記事ではフェイルオーバ操作の詳細についてご紹介いたします。
1フェイルオーバ操作
Veeamレプリケーション実施後、レプリカVMを起動するときに用いる操作で、元のVMや運用サイトで障害が発生した場合や、移行作業を実施する際に使用します。オペレーションとしては「Failover now(今すぐフェイルオーバ)」、「Planed Failover(予定したフェイルオーバ)」、「Failover Plan(フェイルオーバ計画)」が行えます。
・Failover now(今すぐフェイルオーバ)
一般的なフェイルオーバ動作であり、指定したレプリカVMを選択したリストアポイントから起動します。複数のVMを選択して一括で実施することも可能です。特定のVMを復旧したい場合に使用します。
・Planed Failover(予定したフェイルオーバ)
選択したVMに対して自動的に以下の操作を実行します。VMのシャットダウンや差分反映を一括で行うため、自動的な移行作業を実施したい際に使用します。
a 差分レプリケーション実行
b 移行元VMのシャットダウン
c 整合性維持のため差分レプリケーション再実行
d 移行先に作成されているレプリカVMを起動
・Failover Plan(フェイルオーバ計画) ※Enterprise Edition以降で可能
あらかじめどのレプリカVMをどの順番で起動するかを設定しておくことで、複数VMのフェイルオーバをワンクリックで実施できます。運用サイトが全損した場合などに使用し、リストアオペレーターの手間や工程の削減により迅速な復旧を行えます。VM毎に起動実行のディレイタイムを設けることも可能で、これによりADやDBサーバのサービス起動後、アプリケーションサーバを起動するといったことも自動的に行えます。
2フェイルオーバ後の操作
フェイルオーバ後のレプリカVMに対して行う操作であり、起動したレプリカVMをどのように取り扱うかを指定します。オペレーションとしては「Undo Failover (フェイルオーバの取り消し)」、「Permanent Failover(フェイルオーバのコミット)」、「Failback to Production(フェイルバック)」が行えます。
・Undo Failover (フェイルオーバの取り消し)
フェイルオーバ実施前の状態へと戻す操作です。フェイルオーバしたレプリカVMやアプリケーションが正常に起動せず、別のリストアポイントから復旧させたい場合や、試験的にフェイルオーバを実施した場合に使用します。フェイルオーバ自体が取り消し(キャンセル)されるので、フェイルオーバ後にレプリカVMに変更したデータは削除され、レプリカVMは最後にレプリケーションした電源OFFの状態へと戻ります。
・Permanent Failover(フェイルオーバのコミット)
レプリカVMを完全にコミットさせ、レプリカVMの世代管理のためのスナップショットが全て削除されます。VMを完全に移行させる場合や、災対サイト側で半永久的にVMを使用する際に使用します。コミット後は、他のリストアポイントを使用することやフェイルバックを実施することはできなくなります。
・Failback to Production(フェイルバック)
フェイルオーバしたレプリカVMを、運用サイト側に切り戻しする際に使用します。フェイルバック操作の詳細は次回の記事で記載いたします。
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