前回はv10で実装予定のNAS(SMB(CIFS)/NFS)、ファイルサーバのバックアップに関して増分スキャンの仕組みをご紹介しました。今回は主にバックアップデータの保存に関してご紹介していきます。
NASバックアップでは、仮想マシンのバックアップなどで用いられている単一ファイル形式(vbkやvib)ではなく、どこにどのファイルのデータが格納されているかを保存したメタデータと実データを持つBLOBデータに分けてバックアップデータを保存しています。これはなぜかというと、従来の方式では必要なファイルのデータ取り出しを高速に行うためにはデータベースなどの要件が必須となってしまうためです。
形式は異なりますが、保存先としては既存のリポジトリであるWindows、Linux、ファイル共有(CIFS、NFS)、Data DomainやStoreOnceなど連携機能のある重複排除ストレージアプラインスなどのリポジトリ、これらやオブジェクトストレージをまとめた論理的な保存先、スケールアウトリポジトリを指定可能です。
※NFSとしてのリポジトリ登録はv10で追加予定
この時の保持期間の指定は、複数のファイルバージョンを持つ場合にどれだけの期間、それらのバージョンを保持するかというものです。
ここでスケールアウトリポジトリを保存先とする場合には追加でメタデータに対して冗長性を持たせることができます。スケールアウトリポジトリに登録されている複数の保存先に分割してデータを保存している場合、メタデータまで分割してしまうと、一部が利用できなくなった際に、リストアが全く行えなくなってしまいます。これを避けるため、BLOBデータ自体は均等に配置されますが、メタデータは2つのコピーを追加で持つように配置され、2つの保存先が使用できなくなった場合にもリストアを可能にしています。
また、仮想マシンなどのバックアップジョブではデータのアーカイブのために、スケールアウトリポジトリでキャパシティ層を構成する必要がありましたが、NASバックアップはアーカイブすることが一般的であるため、スケールアウトリポジトリを構成しなくとも、ジョブでアーカイブ用のリポジトリを指定できます。
ここでは通常のリポジトリに加えて、オブジェクトストレージのリポジトリも選択でき、AWS S3やAzure Blobなどのクラウドストレージをアーカイブ先としてより簡単に利用できるようになっています。さらに、アーカイブ時の保持期間を別途設定できることは、当然のことですが、アーカイブしたデータのファイルバージョンの保持方式や、アーカイブするファイルの拡張子なども細かく指定可能です。
次にリストアに関してですが、オリジナルまたは指定したパスに対して、シンプルに以下の3つの方式を提供しています。
- ファイル共有全体のリストア
- 指定時点の状態まで、変更されたファイルのみをリストア
- ファイル、フォルダ単位での個別リストア
リストアポイントの指定は下記のようにスライドバーで選択する方式です。
最後に、その他の機能として特長的なものを紹介させていただきます。VSSスナップショットまたはストレージのスナップショットからのデータ読み取り機能です。VSSスナップショットは ロックされたファイル をSMB3のファイル共有からバックアップする際にMicrosoft VSSスナップショットからデータを取得するものです。これに対してストレージスナップショットからのデータ読み取りは、ストレージシステムと連携しているわけではなく、下記のように参照するファイル共有のパスの代わりに、別のパスを指定できるというものです。
このため、参照先となるストレージスナップショットは他の手段で作成いただく必要が有ります。Veeamではジョブ実行前後でスクリプトを実行することができますので、基本的にはこれを用いて、NASのスナップショット作成などを実施いただく方法となります。
スクリプトを作成する必要があるため少々手間ではありますが、使い方次第で、オリジナルからではなく、セカンダリのストレージに連携(NetAppのSnapMirrorやSnapVaultなど)した領域からファイルデータを取得し、オリジナルへの負荷をなくすことも可能です。
このように単純にファイルをバックアップするのではなく、できる限り高速に一貫性を保ってバックアップできるような仕組みが実装される予定です。
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