海の日の連休に梅雨明けしてから、連続で最高気温が33度以上を記録した東京とは対象的に、今年のシリコンバレーは冷夏のようだ。
7月でも最高気温で25度を超えた日は数えるほどしかない。湿度は日本とは較べるまでもなく、乾燥しており気温が高くても、日陰に入れば風が涼しくとても過ごしやすい。
そんなシリコンバレーに住む日本人が楽しみにしている夏のイベントのひとつに
OBONがある。
え、OBON? そう お盆である。
シリコンバレー内にいくつかお寺があるが、それらはBudhhist Templeと呼ばれている。
19世紀後半から始まった日本人のアメリカへの移民はここカリフォルニアにも大きな
コミュニティを構成した。
現在は3世、4世の世代で、見た目は日本人であっても日本語ができない人も多い。
第2次大戦で同じアメリカ人でありながら差別を受けた経験から、アメリカに忠誠を示す意味で日本語教育をしない日系家庭もあったという話も聞く。
もちろん1世、2世と世代が続くごとに普段の生活には必要のない日本語が英語にとってかわられるのは当たり前のことかもしれない。(現在のシリコンバレーに住む日本人の間でも子供達の日本語教育は大きな問題で、中学、高校生になると話すことはできても、読んだり書いたりは苦手な日本人の子供も多い。)
そんな中でも冠婚葬祭や日系人のよりどころとして、San Jose, Mountain View, Palo Altoには大きなBudhhist Templeがある。
そして夏には日系人だけでなく、地域の人達に日本の文化を広めようとお寺を広く公開している。お寺ができて96年目のPalo AltoのBuddhist TempleのOBON Festivalは今年が62回目となる。
7月最後の週末土曜日、日曜日と2日間かけて、お寺を解放し今年も多くの人が集まった。
敷地内に屋台がならび食べ物や飲み物を販売する。うどんや焼き鳥だけでなく、ハンバーガーやシェーブアイスがあるところがアメリカらしい。
飲食の屋台だけでなく、日本の縁日のようにちょっとしたゲームの屋台もあり、お腹を
満たした子供達(大人もか?)はそちらに列を作る。
アメリカではTic Tac Toeと呼ばれている、〇×の三目並べ。僕の田舎では”まるばつ”とか”まるぺけ”と呼ばれていたあれだ。
屋台にいるお兄さんお姉さんと勝負して勝ったら好きな景品が選べる。もちろん負けても景品はあり。輪投げやピンボールの屋台もある。盆栽の展示も人気だ。英語でもBonsaiは立派に通じるくらいに市民権を得ているもののひとつ。
最初の移民が農業に従事していたからか、日本人の手先が器用だからなのか、どの作品も大変立派なものばかりで、盆栽を目当てにOBONに来るアメリカ人盆栽収集家もいるそうだ。
そんなわけで盆栽は展示だけでなく交渉が成立すればその場で購入も可能。
屋内でも各種のイベントが目白押し。大正琴に民謡、琴に尺八、琉球舞踊、剣道と合気道の演舞会と続く。
そして日が落ちてから、ちょうちんに電気が灯り屋外のステージでは盆踊りが始まる。
ここで流れる曲は日本オリジナルのもの。炭坑節や東京音頭にほっとする。
浴衣を着て踊るのは日本人や日系人だけではない。シリコンバレーに住む色々な国の人達も浴衣に袖を通して盆踊りを楽しんでいる。
聞けばFestivalの前の週に練習会が何度かあり、そちらに通って踊りの練習をしてきた熱心な盆踊りマニアも。
浴衣で踊る足元がスニーカーの人もちらほらいるのにはちょっと笑えるが
日本の文化を国境を超えて慕う人達がいるのはとても嬉しいことだ。
イベントを運営している初老の日系人の人達に声をかけると日本語交じりの流暢な英語が返ってくる。
数十年の移民の歴史の中で2世、3世としてこの地に生まれて育った人達と(移住数年の)ハイテク移民の我々との背景の違いを感じながらも、異国の地で日本人文化を守っているこの人達に改めて尊敬の念を感じずにはいられない。
また来年もOBONのニュースを聞いたら、どこかのお寺に出かけてみようと思う。