クラウドにDBをレプリケーション。
処理を分散したことで、生産性を大幅に向上。
商号 | 株式会社エスビーティー |
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設立 | 1993年1月 |
資本金 | 1000万円 |
従業員数 | 1487名(国内262名、海外1225名、2019年12月現在) |
事業内容 | 新車・中古車の輸出販売、海外進出サポート |
世界24カ国に拠点を持ち、120カ国以上に中古車輸出を行ってきた国内最大手の専門商社エスビーティー(以下、SBT)は、1993年1月に設立以来、これまで自社で使う情報システムは全て内製し、自社で運用をしてきた。しかし2019年の初頭より、データ量の増加による負荷の軽減、及び災害対策を兼ねて、DBをクラウドにレプリケーションする検討を始めた。DBはいささか古いバージョンだったため、それをレプリケーションできるツールを探したところ、該当したのがクライムの提供するDBMotoだった。選定の背景、導入後の効果などについて、IT企画部 システム課主任の内山臣一氏に話を聞いた。
IT企画部 システム課主任 内山臣一氏
車の輸出というと新車をイメージする人も多いかもしれないが、多くの中古車が日本から海外へ輸出されている。日本車は品質の高く、故障することが少ないというイメージを持たれているため、人気が高い。この印象は中古車も同様だ。しかも日本人は車を丁寧に扱い、キレイに乗る。それも海外で人気を集める理由だ。
1993年に設立されて以来、海外へ中古車輸出を手掛け、今では同業界をけん引する立場となっているのがSBTである。現在、国内拠点6箇所、海外拠点33箇所で事業を展開、世界120カ国以上に中古車を輸出している。「アフリカなど途上国では本当に日本の中古車の人気は高い。まだまだ需要は伸びると予想しています」と内山氏は語る。
また中古車輸出に知識や経験のない個人やディーラーの方でも、容易に中古車輸出ができる「海外トレード」(通称:カイトレ)というサポートサービスの運営もしている。そのほかにも、SBTでは中古車の輸出販売で培った経験・ノウハウ、世界33カ所の拠点を武器に、国内企業の海外進出をサポートする事業も展開している。
SBTではこれらの事業を支えるための情報システムは、すべてIT企画部 システム課のメンバーが構築・運用をしてきた。「社内システムはすべて内製なんです」と内山氏は話す。
だが、年々、事業が大きくなるにつれ、従業員も増え、蓄積されるデータ量も増えていく。「集計や検索に時間がかかり、サーバ自体にも負荷がかかるのも問題でした」(内山氏)
もう一つ、内山氏たちが問題として感じていたのは、万一、災害などで停電が起こると、仕入れ管理や輸出支援などの一部のシステムが止まってしまい、データが見られなくなることだ。同社では国内、海外に複数の拠点を設けているが、社内システムはすべて自社で運用している。つまり自社が被害を受け使えなくなると、ビジネスが完全に止まってしまうことになる。「ビジネスの継続性を維持するためにも、クラウドにDBを複製し、リスク分散を図りたいと思いました」(内山氏)
同社のDBはテーブル数が1500を超える大規模なもの。中にはあまり使われないテーブルも含まれているため、すべてのテーブルをクラウドにレプリケーションするわけではないが、「900個ぐらいはレプリケーションする予定」と内山氏は語る。
市場にはさまざまなレプリケーションツールが登場している。それらの中から、自社で使っているDBに対応しているかどうかをチェックしたという。「当社のDBのバージョンがあまり新しいものではないため、選択肢はそうありませんでした」と内山氏は明かす。候補として選択したのが、クライムが提供する米Hit Software社開発のリアルタイムレプリケーションツール「DBMoto」である。
DBMotoの最大の特長は様々なDBに対応していること。またエージェントレスなため、DBが稼働するOSなどのプラットフォームに依存することなく、対応できる。第三の特長は3つの「全件リフレッシュ」「ミラーリング」「シンクロナイゼーション」というレプリケーションモードを用意していることだ。
DBMotoを試してみるべく、クライムの担当者に連絡を入れたところ、ハンズオンセミナーを紹介され、参加してみたという。「実際に体験して見て、インストールや設定なども簡単なので使いやすいと思いました。そこで本当に当社のDBで、評価してみることにしました」(内山氏)
だが、評価をする中で、少し苦労したことが発生したという。同社ではレプリケーションをするために事前に準備しているトリガーがあったという。同社ではミラーリングモードを選択。同モードにはレコードの参照方式として、トランザクションログ、ログサーバエージェント、トリガーの3方式を用意しており、トリガー方式を採用したという。すると「事前に当社が用意しているトリガーと、ツールのトリガーの実行順序が違っており、本来クラウドにレプリケーションしたいデータと異なるデータが複製されることが発生しました。ちゃんとトリガーの実行順位をDB側で設定すれば事なきを得たのですが、このようなトラブルが起こった際、非常に丁寧な対応をしてくれました。サポートの手厚さがDBMotoのソリューションプロバイダとして、クライムを選んだ理由です」(内山氏)
評価期間を経て、2019年7月にDBMotoを導入。レプリケーションを予定している900個のテーブルの内、「よく使うものから順にとりかかり、既に4分の1の290個は完了しました」と内山氏はにこやかに笑う。
導入後も、細かなところで多少のトラブルはあったものの、「そういうとき、すぐに電話で聞けるのがクライムの良さだと思います」と内山氏。クライムでは平日9時~18時まで電話での問い合わせができる。「エンジニアであれば、起こっている問題を今、その場で解決したいと思うもの。しかも丁寧に対応してくれたので、非常に助かりました」(内山氏)
テーブルごとに同期を実行するタイミングを設定しており、常にリアルタイムな情報が求められる在庫系システムに関しては、5秒ごとに同期、更新を実行しているという。いずれのテーブルに関しても、「問題なく同期更新が行われています」と内山氏は語る。
導入効果について尋ねると、「DBの負荷が分散され、検索処理は従来30秒かかっていたものが3秒になるなど約10倍、バッチ処理は従来の5倍以上の速さを実現していると思います」と内山氏は満足そうに語る。
例えば最も重いテーブルはレコード数5900万、5ギガバイトもある。それを60秒に1回、DBMotoで更新をかけているが、約30秒で同期が完了するという。「処理速度が大幅に向上したので、日ごろの仕事でシステムを使っている社員の生産性は間違いなく向上していると思います」と内山氏は断じる。
2020年6月までには、予定しているすべてのテーブルのレプリケーションを完了させたいという内山氏。それらの作業が完了すると、BI的な活用を進めていきたいという。「今は当社ではユーザーはレポートを作ることはあっても、本格的なデータ活用はできていません。今後、予定しているテーブルがすべてクラウドにレプリケーションされると、例えばユーザー自身がデータを加工して何かビジネス的な問題を発見するというような活用もできるようになるでしょう。そういう活用を進めていきたいと思います」
今後もまだまだ日本車の中古車輸出市場は伸びていくと予想されている。DBをクラウドにレプリケーションしたことで生産性が向上し、データ活用の基盤も整備された。同社の中古車輸出ビジネスの成長はさらに加速されそうだ。